研究概要 |
本研究は、アミド型局所麻酔薬による咀嚼筋に対する系統的障害特性を単離筋形質膜(SL)、筋小胞体(SR)を用い、その膜系機能に対する効果について精査しようと計画されたものである。得られた研究結果は以下のとおりである。 ニュージランド白色家兎(2-2.5kg)の右則の咬筋に1%局所麻酔薬(ブピバカイン、メピバカイン、リドカイン)を、対照として左側咬筋に0.9%salineをそれぞれ投与し,1、3、5そして10日後に摘出した左右咬筋から筋小胞体(SR)と筋形質膜(SL)をそれぞれ分離した。oxalate存在下でSRのCa uptake velocity と Ca-ATPase活性を測定した場合、そのcoupling ratio はブピバカイン投与3日後に著明に低下し、この低下はブピバカインで最も顕著であった。このような効果は、メピバカインでも若干みられたがリドカインではみられなかった。ブピバカイン投与3日後に調製分離したSRでは:1)定常状態Ca uptake(oxalate非存在下)とCa permeabilityに低下がみられたが、メピバカイン、リドカインではみられなかった。2)これらの低下は、ベラパミル(0.125mg/ml)0.5mlを予め処置することによって抑制された。また、3)^<32>P遊離速度(V)、総リン酸化中間体(EP)量およびturnover number(V/EP)は不変であった。ベラパミルの効果は、ブピバカイン投与3日後の咬筋ホモジネートCa uptakeにおいても再現された。ブピバカインはin vitroで:1)濃度依存性(0.5-50mM)にSR定常状態Ca uptakeを低下させ、2)この低下は、SRのCa放出チャンネルを閉口させる条件のライアノジン(750mM,10分間処置)およびプロカイン(2mM)で抑制された。SLのNa,K-ATPaseとNa-Ca exchange活性はSRのCa uptakeと同様、ブピバカイン投与3日後に著明な低下を示した。ブピバカインのSL機能に対する効果もベラパミルで抑制された。 以上より、ブピバカインのSR Ca輸送を低下させる効果は、Ca permeability,oxalate entryそしてCa pump unitに関連するATPase反応段階とは独立したものであり,ゲートチャネルからのCa放出増大に一部依存している可能性がある。また、SLの酵素および交換体タンパク機能もブピバカインによって抑制を受けるが,SRの場合でもSLの場合でも,L-型チャネルを介するCa流入の増大がブピバカインによる骨格筋機能障害にリンクしていることが示唆された。
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