T細胞の活性化はCD3/TcR複合体を介して行なわれるMHC上のペプチド抗原の認識が不可欠であるが、完全な免疫応答には抗原提示細胞とT細胞上の接着分子を介した刺激が必要となる。口腔扁平苔癬病変部におけるT細胞浸潤は、上皮における抗原提示細胞であるランゲルハンス細胞とT細胞の相互作用の結果であると考えられる。我々はT細胞活性化の鍵を握ると思われるCD28分子に注目し、そのリガンドの検索を行った。 CD28のリガンドとしては、B7/BB1が知られていたが、我々はB7/BB1以外に第2のリガンドが存在することに気づき、その分子(B70と名付けた)の遺伝子クローニング、生化学的解析、発現、機能についての解析を行った。CD28の第2のリガンドB70分子は、B7と同様にIgスーパーファミリーに属する接着分子であった。活性化B細胞、活性化T細胞、活性化マクロファージに発現が認められる点ではB7と同様であったが、新鮮分離末梢血単球および樹状細胞の一部に恒常的に発現が認められ、それらの発現は刺激により急速に増強されることが明らかになった。 正常および病変組織におけるB7およびB70の発現について、免疫組織化学染色にて検討したところ、正常上皮においては、B7およびB70の発現が認められなかったが、病変組織の一部において、ランゲルハンス細胞と思われる細胞にB70の陽性所見が得られた。今後さらに、検体数を増やして検索する必要があるが、病変部におけるランゲルハンス細胞上のB70分子と浸潤T細胞上のCD28分子間での相互作用が病態形成に関与していることが示唆された。さらに培養角化細胞においてもgammaIFN処理により、B70の発現が増強することが観察され、ランゲルハンス細胞に加え角化細胞上のB70分子もT細胞上との相互作用に関与していることが示唆された。
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