平成5年度の科学研究費に基づく研究概要は以下のとおりである。研究計画調書に沿って、1993年1月から12月までの1年間に顎関節疾患の臨床診断の下に放射線科に各種X線検査の依頼があった患者を対象とした。放射線科に保存してあるアンケート及び診査記録を基にしてデータベースを作成し、コンピューター入力を行った。 1年間の新来患者数は391名であった。そのうち、顎関節断層撮影を行った患者数は、295名(75.4%)であった。期間中に2回以上の断層撮影による検査を行った患者数は、延べ98名であった。また、MRI検査を行った患者数は、期間中に複数回の検査を行った患者を含めて延べ90名であった。 一連のデータベースの作成により、各患者の検査内容及び診療記録等の検索を容易に行うことが可能となった。 研究結果の一端は、裏面の別掲のように報告している。 1.断層撮影を複数回行った顎関節症患者の下顎頭の経時的な形態変化について分析した。その結果、全体の約40%について撮影間に形態変化を認めた。またそのうちの約半数では、下顎頭関節面の平坦化あるいは丸みの増加を伴って漸次短縮する傾向が認められた。 2.放射線治療を行った上顎悪性腫瘍の患者について顎関節部を含めた各種画像診断から放射線治療の副作用として開口障害を呈する可能性が示唆された。顎関節症については、患者数の増加と低年齢化が指摘されている。病態の進行や症状改善のメカニズム等については未だ不明な点が山積しており、それらの点について、今後更に明らかにして行きたい。
|