本研究の目的は、各種CRTの輝度特性を物理的に測定し、さらにヒトの視覚による評価を行うことで、CRT診断に要求されるCRTの物理的輝度特性を考察することにある。 分析は、汎用のパーソナルコンピュータ用CRTであるPC-KD854 (NEC)、CRT診断を目的としたCRTであるVIEW 2000(Virtual Imaging)ならびにHI-C(富士メディカルシステム)を対象として行った。使用期間はいずれも約2年である。視覚評価としては、2種類のピクセル値からなるステップ像を種々のピクセル値に対して人工的に作成し、ステップ境界を識別できる最少のピクセル値の差を求めた。なお、物理的輝度測定ならびに視覚評価はいずれも暗室下にて行い、CRTの有効領域以外はマスクすることで余計な光の入射を防止した。 物理的輝度測定の結果、提示可能な最大輝度はCRTの種類によつて異なり、PC-KD854では約146[cd/m^2]、VIEW 2000では約233[cd/m^2]、HI-Cでは約300[cd/m^2]であった。また、ピクセル値の変化に対する輝度値の変化率もCRTの種類によつて異なった。視覚評価では、いずれのCRTにおいても、100[cd/m^2]程度まではピクセル値の差にして1のステップ境界をも識別できた。ただし、いずれのCRTにおいても、ピクセル値にして1の変化に対する輝度値の変化が比較的大きく、CRT診断に要求されるCRTの輝度特性を決定する上で重要なヒト視覚の識別限界輝度変化量を求めることができなかった。今後、微小な輝度変化を実現できるCRTを検索し、本研究を進める予定である。
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