病巣感染の原病巣として口腔内感染症が多いことは以前から指摘されていたが、同一口腔内に第2疾患が生じる可能性について調べたものは少ない。そこで本研究では感染根管(根尖病巣)が同一口腔内の無菌的炎症巣へ及ぼす影響を検討するため、以下の3群に分けて動物実験(ネコ)を行っている。 A.犬歯を抜髄後、根管内にStr.sanguisの細菌懸濁液を注入して感染根管を作成する。それによって菌血症が生じるか否かを調べるとともに、注入した細菌に対する抗体価の変動を観察する。一定期間後、他の歯に熱刺激を加えて中等度から高度の無菌的な歯髄炎を作成し、Str.sanguisの細菌懸濁液を静注して、経時的に細菌学的および免疫学的検索を行う。 B.感染根管を作成せず、熱刺激を加えると同時にStr.sanguisの静注のみを行う。 C.感染根管を作成後、他の歯に熱刺激を加えるがStr.sanguisの静注は行わない。 現在まで得られた結果は、A群の2匹では中等度の炎症を誘発した歯髄からは細菌がまったく検出されず、高度の炎症歯髄からはStr.sanguisが25%の頻度で検出された。いずれのネコでも感染根管の存在による菌血症の発生はみられなかった。またB群の1匹では、中等度の炎症歯髄で0%、高度の炎症歯髄では20%の感染率であった。 今後はさらに研究を進め、感染根管から他の歯への細菌感染の頻度およびその条件(歯髄の炎症状態との相関関係、菌血症・免疫反応の関与)を検討していく予定である。
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