根管貼薬剤としての水酸化カルシウムの意義及びその操作性に関し、日本薬局方水酸化カルシウム末を基にした糊剤と、セルロースその他の成分を添加した試作ペーストを用いて実験を行い、以下の結果を得た。 ◆日本薬局方水酸化カルシウム末を基にした糊剤 (1)pH:in vitroの実験で、根管に貼薬した水酸化カルシウムは根尖孔を介して周囲のpHを上昇させることが分かり、緊密で貼薬量の多い程pH変化も大きかった。 (2)操作性:混水比50%で調整した糊剤の操作性をエポキシレジン製透明根管模型を用いて検討した。リ-マ-に採取した糊剤を逆回転で根管に繰り返し運ぶ方法では時間がかかり、21ゲージ針を装着したシリンジからは直接注入できず、レンツロでは水分と粉末粒子が遊離するなど全般に操作性は不良であった。 (3)抗菌性:感染根管に臨床応用した結果、貼薬後の根管は無菌性を獲得しており、打診痛や圧痛、排膿などの症状の改善例も多く認められた。 ◆試作型水酸化カルシウムペースト (1)pHとCa濃度:ペーストを充填した根管模型を浸漬した水10mlのpHは10前後で推移し、Ca濃度は経時的に上昇した。薬局方粉末の場合と大きな差はなく、添加成分がOH^-やCa^<2+>の拡散を妨げていないことが判明した。 (2)操作性:根管模型への充填成績は注入、レンツロともに良好で、操作性も優れていた。 (3)抗菌性:半流動培地にプラークから分離した細菌を浮遊させペーストを充填した23ゲージ針を投入したところ、針の先端の周囲には細菌発育の抑制された領域が出現した。
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