研究概要 |
本年度は、外来から得られた歯肉片が小さかったために、口腔由来の角化細胞であるSCC9という株細胞を標的細胞として用いて実験を行った。口腔由来のスピロヘータとしては、T.denticola,T.vincentii,T.pectinovorum,T.socranskiiの4菌種を用いた。この4菌種より超音波抽出した標品を細菌側の因子として用いた。 その結果、いずれの細菌抽出物でも、SCC9の剥離は起こさなかった。これらの結果は、T.denticolaが、ある種の細胞の剥離を起こすというこれまでの所見とは異なっていた。コントロールとして用いた、P.gingivalisの超音波抽出物は剥離能を持っていたので実験系そのものの問題とは考えにくい。また、剥離能と大きな関連があると考えられている、BANA活性でみたタンパク分解能は失われておらず、超音波処理中の失活とは考えられない。現在、細胞剥離能は、そのタンパク分解酵素の働きによると考えられている。しかし、最近、ベ-ニ-らは、その作用は、数分の短時間で起こり、酵素の作用とは考えられないとしている。今回得られたデータもそれと一致した結果となった。具体的にそれがどのような作用によるのかは現在不明であるが、今後、その点を明らかにしてゆきたい。 また、歯周組織由来の細胞の培養を試みる間に、歯根膜由来の細胞の培養が可能になった。この細胞は歯周組織の再生のもととなる細胞と考えられている。この細胞に対するBMP(骨形成因子)の作用を調べたところ、BMPがこの細胞に対し、石灰化促進の作用があることが明らかになった。今後、その詳しい、メカニズムを明らかにしてゆきたい。
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