1、歯肉溝中の歯周病原性細菌の高感度検出法の碓立 成人性歯周炎と最も関連性の高い歯周病原性細菌であると考えられているPorphyromonas gingivalis(P.g.)に着目し、高感度検出法の確立を試みた。下記で用いるPCRプライマーおよびP.g.特異的プローブは日本大学松戸歯学部生化学教室の安孫子教授より供与を受けた。 (1)P.g.381株培養菌体を蒸留水にて10^6菌体/mlに調製した細菌懸濁液および、そのl0倍連続希釈液を作成し、各々よりDNAを抽出した後、Polymerase Chain Reaction(PCR)にて、P.g.特異的なDNA領域を増幅した。この増幅の特異性は、非放射性ラベルを施したP.g.特異的プローブを用いたサザンブロッティングにより確認した。 (2)(1)で増幅したPCR産物をスロットブロットした後、上記プローブを用いて検出した結果、発色度が検体中のP.g.菌体数依存的に増加することが確認された。また、本検出系では検体中の1〜l0菌体のP.g.が検出可能であった。すなわち、本検出系は、非常に高感度であるのみならず、ある程度の定量性が認められた。 (3)Prevotella intermediaを蒸留水にて10^6菌体/mlの濃度で懸濁した細菌懸濁液で、P.g.381株菌体を(1)と同様に調整しP.g.の検出を行ったが、結果に変化はなかった。さらに、従来より本教室で使用している間接蛍光抗体法と感度の比較を行ったところ、今回開発した検出系は、l0^3倍高感度であることがわかった。 2、臨床サンプルへの応用 (1)種々の臨床所見を有する歯周ポケットより歯肉縁下プラークを採取し、サンプル中のP.g.の検出を行った。臨床的サンプルにおいても本検出法は間接蛍光抗体法よりはるかに高感度にP.g.が検出可能であった。 (2)現在本検出系を用いて歯周処置後7週までのP.g.の動態を検討中である。今後さらに、長期間の観察を行いP.g.の術後再定着について検討する予定である。 間発した検出法は高感度であり、臨床応用が可能であることがわかった。この検出法を利用すれば、さらに詳細に歯周病と歯周病原性細菌の関連性が検討できると考えられる。
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