歯周病原性細菌A.actinomycetemcomitans(A.a)は、菌株によって白血球毒素産生能に強弱がみられる。以前の我々の研究でも、また外国の他のグループの報告においても、白血球毒素産生株、非産生株のどちらにも、白血球毒素をコードする構造遺伝子(lkt A)が存在することが明らかになっている。本研究では、A.aの白血球毒素産生能の違いを、白血球毒素の活性化を調節すると考えられている蛋白をコードするlkt C遺伝子の観点から調べた。JP2株は、強力な白血球毒素を産生することが知られており、そのlkt C遺伝子のDNA配列も報告されている。そこで、lkt CのDNA配列に基づいて、一対のオリゴヌクレオチドプライマーを合成した。白血球毒素産生株Y4、ATCC29522、非産生株SUNY Ab67、産生株、非産生株の中間型ATCC29523より、染色体DNAを抽出し、lkt C遺伝子の増幅反応(PCR)を行った。しかし、lkt C固有のDNA断片は、4株ともに増幅されなかった。サザンブロット法による解析では、4株ともに、lkt C遺伝子が存在することがわかっている。PCRに用いたプライマーが、JP2株のlkt C遺伝子配列に基づいたものであったことから、JP2株と他の4株とでは、lkt C遺伝子のDNA配列に違いがある可能性が考えられる。それが、白血球毒素の活性化を調節する蛋白の機能の違いとして表現され、白血球毒素の産生の強弱の差となっていることが示唆される。lkt C遺伝子の全長にわたるDNA配列の解析と比較が今後必要と思われる。
|