研究概要 |
セメント質う蝕は、病変部から検出される細菌種がエナメル質う蝕や象牙質う蝕とは異なっているため、病態学的にまだ不明な点が多い。そこで本研究では、われわれが開発したin vitro象牙質う蝕誘発実験系(1988)を応用して、セメント質う蝕の実態を明かにしようと試みた。 1.実験用試料の作製:ヒトの健全抜去歯から無菌的に歯根部試料片を作製し、その一部だけを露出させて実験用試料とした。 2.培養:1.の実験用試料を入れた培養液を用意し、それぞれに継代保存中の菌株(Streptococcus mutans MT8148,Streptococcus sobrinus 6715,Lactobacillus casei PSR3002,Actinomyces viscosus ATCC19246,Bacteroides endodontalis ATCC35406,Bacteroides gingivalis 381,Propionibacterium acnes ATCC6919)を単独ないし2種類を混合させて注ぎ嫌気培養した。なお、対照群には何も菌を接種しないものを用いた。培養は4週および12週行ない、その間3日ごとに培養液の半量ずつを新鮮な培養液と交換するとともに、接種菌の消長を追跡した。 3.う蝕病変部の病理組織学的解析:所定の培養期間終了後、各培養液から試料を取りだし走査電顕およびマイクロラジオグラムによるセメント質破壊部の解析を行なうとともに、脱灰標本を作成して、細菌染色および酵素抗体法による免疫組織化学的染色を行ない、菌種間のセメント質う蝕誘発能の違いについて検討した。 その結果、4週培養例では、Bacteroides種を除く全ての菌種が、一定のセメント質う蝕誘発能を有することを示唆する知見が得られた。 しかし、12週培養例の実験は現在継続中であり、最終的な結果を得るまでには至っていない。
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