研究概要 |
グラスポリアルケノートセメントの接着機構としては、従来、ポリマーと歯質カルシウムとのキレート結合が考えられてきたが、申請者らのこれまでの研究の結果、セメント液成分中のポリマーだけでなく有機酸等の低分子添加物が歯質との反応に何らか寄与しているものと考えられ、また、材料によってその接着性がそれぞれ異なっていた。 今回、これらの原因を明らかにするため、市販2種のセメント液、松風ハイボンドグラスアイオノマーC,ジ-シ-フジアイオノマータイプII(以下、S-C,G-II)を用いて液成分中のポリマーの構造及び添加成分の分析を、HPLC,NMR,IRで行った。その結果、セメント液から分離したポリマーのIRスペクトルでは、S-C,G-IIのポリマー間に明瞭な差異は認められなかったが、^1H-NMRスペクトルでは、S-Cにポリアクリル酸構造に由来するシグナルの他に、共重合成分と思われるシグナルが2〜3ppmに現れていた。一方、G-IIでは、共重合成分らしきシグナルも微かに現れていたが、ほとんどポリアクリル酸構造に近いものと思われた。 薄層クロマトグラフィーにて溶離された添加成分のHPLCクロマトグラムでは、S-CでRt値11min付近と13min付近に2つのピーク認められた。また、G-IIにおいてもRt値11min付近に2つのピークと17min付近に1つのピークが認められ、両者ともに2種類以上の添加成分の存在が確認された。これらのピークを標準物質で同定したところ、両者ともに酒石酸が、G-IIにマレイン酸が確認された。また、ポリマー分離にて得られた上澄み液の^1H-NMRスペクトルにおいても、4.7ppmに酒石酸のシグナルが確認された。これらはいずれも歯質Caと反応性が高いものであるから、歯質との接着に関与していると思われた。
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