本研究は、歯肉線維芽細胞の培養系を用い、歯周病関連細菌内毒素(LPS)で細胞を刺激した場合の、細胞応答の変化と、特に歯周病の病態に深く関与していると考えられるインターロイキン1beta(IL-1beta)とインターロイキン6(IL-6)の産生能について検討した。 1.位相差顕微鏡による観察:無刺激時と比較して、いずれの場合も形態学的に大きな変化は認められなかった。 2.細胞のDNA量 :無刺激では0日目から1日目にかけてDNA量は増加する傾向にあった。 Actinobacillus actinomycetemcomitans Y4株(A.a.)、Escherichia Coli 0111株(E.Coli)のLPS刺激による細胞破砕物中のDNA量は減少する傾向が認められた。またPorphyromonas gingivalis 381株(P.g.)、Fusobacterium uncleatum ATCC 10953株(F.n.)のLPS刺激では有意に増加した。 3.細胞の総タンパク量 無刺激とE.Coliでは0日目よりも1日目で細胞のタンパク量は増加する傾向にあったが、A.a.、P.g.、F.n.のLPSによる刺激でDNAあたりの細胞の総タンパク量は有意に抑制された。 4.各種LPSによる歯肉線維芽細胞のIL-1betaおよびIL-6の誘導 1)IL-1beta :培養上清中及び細胞中でIL-1betaの産生は認められなかった。 2)IL-6 :培養上清中のDNAあたりのIL-6量は0日目に比較して1日目では特にP.g.のLPSで刺激時では他に比較して有意に増加した。A.a.、F.n.のLPS刺激時では有意に減少した。細胞中のIL-6の産生は認められなかった。 考察:歯肉線維芽細胞の各種LPS刺激による応答は、細菌種間で差があり、各種細菌のLPSは歯肉線維芽細胞のサイトカイン産性能に影響した。
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