吸光光度分析には日本分光社製、UVIDEC-320を用いて吸光度を測定し以下の項目について実験を行った。 1.色素の選定:色素が溶媒として用いた10%硝酸や象牙質成分に影響されずに、濃度と吸光度の関係から得られた検量線が一定の比例関係を示す必要があった。 このため、10%硝酸溶液と10%硝酸象牙質溶解液に汎用性の高いメチレンブルーと塩基性フクシンを溶解した際の検量線について比較検討した。 結果、メチレンブルーでは、検量線と回帰直線はほぼ一致しており一定した比例関係がみられた。しかしながら塩基性フクシンでは一定した比例関係が認められなかった。 以上のことからメチレンブルーは塩基性フクシンに比べ本研究に適した性質を有している事が判明した。 2.試料の選定:現在入手が容易で、条件を規定しやすし推定年齢1.5歳から5歳までのウシ下顎切歯をヒト代用試験歯として用い、上記のメチレンブルーを用いて吸光光度分析を行い象牙質透過性に及ぼす影響について比較検討した結果加齢に伴い象牙質透過性が減少する傾向を示した。又、歯種による比較では、4歳のI2とI3を除いて各歯種間に象牙質透過性の差は認められなかった。 以上の結果より牛歯の象牙質透過性は加齢とともに減少し、同一年齢の歯種では透過性は殆ど左右されない事が判明した。 3.今後の研究計画:現在、先の結果をふまえて牛歯の保存条件が象牙質透過性に及ぼす影響についてSEM観察と併せて実験をすすめている段階である。 国内外の関連する研究の中で外側から歯髄側への象牙質透過性を定量分析する方法は見当たらず、今までに比べより臨床的に有効な評価方法を確立させる。最終的には、象牙質透過性に最も大きく左右される因子として考えられている、歯髄刺激や歯質接着性との関連性についてさらに検討していく所存である。
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