研究概要 |
非ステロイド系抗炎症薬Flurbiprofen(FP)は、歯科領域における小手術後の消炎鎮痛薬として処方されているが,近年,Williamsらにより歯槽骨吸収抑制効果が報告され,骨代謝へのFPの作用が注目されている。しかし,これらの報告の多くはin vivoにおける形態学的検討が主で、FPの作用メカニズムは未だ明らかでない。そこで骨形成細胞に対するFPの作用を検討する目的で、骨芽細胞を用いてFPの骨形成作用について検討した。その方法として、1.ヒト骨肉腫由来骨芽細胞様細胞(MG63)を10%FBS含alpha-MEMにて3日間培養後,各濃度のFPを添加した2%FBS含alpha-MEMにてさらに3日間培養した細胞および培養上精を実験に供した。2.アルカリホスファターゼ(ALP)活性,タンパク量の測定にはそれぞれPuzasとBrandの方法,Bradfordらの方法を用いた。3.オステオカルシン(OC)の遺伝子発現は,ヒトインタクト・OCの_cDNAプローブを用いてNorthern法にて_mRNA発現の有無を調べた。4.ヒトインタクト・OCの測定は,細田らによる方法,すなはちヒトOC N端およびC端に対する抗体を用いたsandwich immunoassay法にて行った。 その結果として,1.ALP活性・タンパク量において対照群とFP添加群間には,有意な差は認められなかった。2.インタクト・OCはNorthern法においては,FP添加群で強い遺伝子発現が認められ,ELISA法においては,その分泌量は対照群と比べてFP10^<-8>Mで最大となり,約3倍の分泌量が認められた。今回の実験から,FP添加によって骨基質中のタンパクであるOCの遺伝子発現,分泌量の促進を認めたことから骨芽細胞に直接作用し,石灰化を促進することが示唆できた。一方,FPの骨吸収抑制効果については,我々はすでに破骨細胞の形成系において,破骨細胞前駆細胞に直接作用し,破骨細胞への分化を抑制する効果があることを明らかにしている。以上のことから,Flurbiprofenの骨代謝への作用は,骨芽細胞への直接作用と,破骨細胞への分化抑制効果の相互作用によるものであることが示唆できた。
|