背面から薬剤を挿入できる改良型ラビットイアーチェンバーを兎の耳介に装着し、内部の観察用テーブル上に微小循環網が再生したもの5例を用意した。ヒトの抜去歯(第三大臼歯)を抜去直後に生食水で洗浄し、タービンにて歯根部象牙質を細断、更に骨ノミとマレットで可及的に0.5m角の細片とした。歯根象牙質細片はEOG滅菌を施し、半分をコントロール群としてそのまま、半分は水酸化カルシウム-生理食塩水のペースト中に30分、24時間、又は1週間浸漬した。コントロール群2例、水酸化カルシウム群は各浸漬時間毎に1例計3例のラビットイアーチェンバーを選択し、各象牙質細片を滅菌生食水中で軽く洗浄し懸濁させて挿入した。挿入直後から、実体顕微鏡下にて細片と微小循環系の反応について検討した。コントロール群では挿入自体による初期の炎症反応が消退した後に、細片群には微小循環網が接近しその形態や血流動態に異常は認められなかった。1週間後からは細片周囲に数個の大小(5〜10mum)の細胞の存在を認めたが、4週間を経ても細片周囲には吸収過程と思われるような所見は認められなかった。一方、水酸化カルシウム浸漬群では特に24時間と1週間浸漬の例において、アルカリ性に起因すると思われる細片周囲の組織空白部が50mu程の幅で生じた。1〜2週後にはそれらは消失し血管枝が細片に接近しており、コントロール群と似た結果を示した。イヤーチャンバーの寿命が1〜2ケ月であることを考えるとこの方法で象牙質吸収過程全体を観察するのは困難ではないかと考えている。
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