本研究は、コンポジットレジンインレー法で使用されるレジンセメントの歯髄為害性について、特に溶出モノマーとの関係について検討したものである。使用したレジンセメントは、Clearfil CR inlay cement(クラレ、CC)・Lite-fil CR inlay cement(松風、LF)・Palfique resin cement(徳山曹達、PC)・Bell-feel inlay cement(鐘紡、BC)・Luting cement(3M、LU)の市販品5種である。製造者指示通りに練和した各セメントの光照射時間を20秒群と40秒群に分け、照射終了後、DMEM培地に2、24、72、168、336時間浸漬させてセメント溶出液を作製し、これがヒト歯髄由来線維芽細胞に与える影響を、^3H-thymidineの取り込みによるDNA合成能を示標として為害性を検討した。さらに、セメント溶出液中の未重合モノマーを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定した。 1.DNA合成能:各試料とも溶出時間の延長に伴って^3H-thymidineの取り込みは減少した。また、20秒照射群と40秒照射群を比べると特にPCにおいて、24時間以降では照射時間の減少による有為な差が認められた。しかし、他の試料では、照射時間の差による^3H-thymidineの取り込みに有為な差は認められなかった。このことは、今回用いた5試料が、Dual-cure typeのレジンセメントではあるがPCについては、かなり光重合依存型であり、他の4試料はDual-cureのシステムが十分機能していることを示していると思われる。 2.HPLC分析:CC以外の4試料からは、HEMAとTEGDMAの溶出が確認された。溶出量は光照射時間の増加により減少し、溶出時間の延長にともない溶出量は増加した。HEMAの溶出は、PC>>BC>LF>>LUであり、TEGDMAの溶出量は、PC>LF>BC>LUの順で認められた。
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