.本研究では、卵巣を摘出した骨粗鬆症モデルのラットに根尖病変を形成し、骨粗鬆症群と健常群とを病理組織学的に観察し、比較した。 実験には、7週齢のSD系雌性ラットを用いた。実験群(骨粗鬆症群)では、卵巣摘出を施し、対照群(健常群)では、疑似手術を施した。処置後、2、4、8週後に両群の動物の下顎左側第一臼歯の歯髄を露出した。両群の動物は露髄2週後に採血し、屠殺して下顎骨を摘出した。採取した血液から、Ca、P、ALP活性の測定をした。摘出した左側下顎骨は、組織学的観察に供し、右側下顎骨は、骨中のCa、P量の定量に供した。 血漿中のCa、P濃度は、実験期間を通じて対照群、実験群ともにほぼ同じ値を示した。しかし、ALP活性は、各実験期間において、対照群に比べて実験群では有意な増加が認められた。骨の単位あたりのCa量およびP量では、対照群に比べて実験群では有意に低下していた。一方、骨塩の量的バランスを示すCa/P比は、両群ともほぼ一定の値で、差は認められなかった。組織学的には、対照群の2、4、8週では、根部歯髄の上方1/2は壊死に陥り、下方1/2は強い炎症性細胞浸潤が見られた。根尖部歯根膜には軽度の炎症性細胞浸潤と根尖部歯槽骨の吸収が見られた。実験群の2週では、対照群に比べて歯髄ならびに歯根膜の炎症性変化には差は認められなかったが、根分岐部の骨髄腔が拡大し、骨が肉芽組織に置換し多孔性であった。実験群の4週では、根部歯髄の全体的に壊死に陥り、根尖部には一部膿瘍が見られた。根尖部歯根膜の炎症性細胞浸潤と根尖部歯槽骨の吸収は2週よりも強くなっており、骨髄膜の拡大も進行していた。また、実験群の8週では、実験群の4週と同様の炎症性変化を示したが、骨髄腔の拡大はさらに進行したいた。 本実験の結果から、骨粗鬆症は、根尖病変の形成を進展させる可能性があることを推測された。
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