研究概要 |
前年度の研究課題である断髄面直下の硬組織形成における全身循環由来のカルシウムの役割に関しては,実験動物としてビ-グル犬を用い,上下顎小臼歯の断髄直後からカルシウム45標識塩化カルシウム(放射能濃度20muCi/ml)の静注による全身投与を12週間にわたり週2回間隔で継続して行った.その結果,血中のカルシウム45濃度は,投与開始から7-8週でほぼプラトーとなり,断髄を行った歯から得られたオートラジオグラフィーでは,血中カルシウムの新生硬組織への移行が明瞭に認められた.この結果については,平成6年度日本歯科保存学会春季学会にて発表予定である. 次に,本年度研究課題である根管内に応用した水酸化カルシウムに含まれるカルシウムの体内移行については,カルシウム45標識水酸化カルシウムを根管内に応用後に,血中および尿中などに存在するカルシウム45濃度を液体シンチレーション法により測定する実験を行った.しかし,当初予想したようなカルシウム45の明瞭な全身移行は特に認められず,水酸化カルシウムを根管内に応用する際の臨床上の指針となるべき結果は今までのところ得られていない. 今後の研究計画については,前年度研究課題であるカルシウム45標識塩化カルシウムの全身投与実験を発展させ,歯内治療後の根尖部および根尖病変の治癒過程での血中カルシウムの役割に関しての実験を行い,根尖部治癒過程での硬組織添加時の血中カルシウムの分布を,同様にオートラジオグラフィーによって確認することを研究目標としている.この実験に関しては,実験前処置としてまず根管の処理を行い,一定期間経過した後に根管形成,根管充填を行い,その直後から塩化カルシウムの全身投与を行う予定である.詳細な実験方法については現在検討中である.
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