リン酸カルシウム系セラミックスはその特性から、人工骨や生体材料の担体として応用されている。リン酸カルシウム系セラミックスは生体内において、さまざまな吸収像を示し、その組成、焼結温度、表面性状等により左右される。吸収には多核巨細胞が関与しているといわれているが、詳細は不明である。本研究は、組成の異なる二相系リン酸カルシウム系セラミックス(BCP)を用い、この点を明らかにしようとするものである。使用したセラミックスは、ハイドロキシアパタイト(HAP)、beta-3リン酸カルシム(beta-TCP)、およびHAPとbeta-TCPからなる3種のBCPである。これらをアテロコラーゲンを用いてペレット状とし、ラット頭頂骨の欠損部に埋入した。経時的に屠殺し、通法に従いパラフィン包埋し、HE染色を施し光学顕微鏡で観察したところ、1週から2週にかけて多核巨細胞が数多く認められ、活性が高いことが推察された。またbeta-TCPを多く含む生体内において吸収の速いものほど多核巨細胞が多かった。2週移行は次第にその数が減少する傾向にあった。次にHAP、beta-TCP、BCP1種をそれぞれ埋入したものを埋入後1週、2週で屠殺し、EPONに包埋し標本を作製し、電子顕微鏡で観察した。その結果、現時点では詳細な判明はしていないが、顆粒表面だけではなく、顆粒の内部においても結晶構造の変化が見られ、この部位では多核巨細胞ではなく、他の吸収因子、体液により溶解が行われているものと思われた。今後は、多核巨細胞自体の構造、性状に着目し、材料の違いによる差異を観察する。同時に、酒石酸耐性酸性フォスファターゼ活性を判定し、破骨細胞との類似性、相異性について検索する予定である。
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