本年度は主に実験義歯製作および解析装置の改良を行った。義歯の咬合接触を検知するため従来櫛形のセンサを用いていたが、当教室で開発した同心円状のセンサのほうが咬頭嵌合位から各検知部までの距離が等しく、接触状態の把握に適していた。しかしこの検知装置は製作が困難であり、特に電極から導出する電線の半田づけが困難で、過去に行った実験ではこの部分が半田により漏洩接触したり、唾液に含まれる電解質の滲出により中間絶縁樹脂に漏洩が生じて機能しなくなる場合があった。 この欠点を改良するため、絶縁樹脂を従来の即時重合レジンを用いる方法からエポキシ樹脂を使用する方法に置き換えたところ、電解質の滲出が低下し口腔内でも高い絶縁抵抗を示し、良好な結果を得る事ができた。半田による接触については、従来の半田用脚部が直線状になっていたのを改め扇型に配列し接触の危険性を低下させた。 解析システムは従来記録をペンレコーダによって行い、記録用紙をデジタイザで計測しデータを得ていたが、今回はON-OFFを直接RS-232Cポートに入力させ、記録・解析を行うシステムを開発した。このことにより解析時間の短縮と記録精度を向上させることができたほか、接触状況をリアルタイムでディスプレイに表示することも可能になり、計測の簡便性を向上させることができた。 今後の問題は、現在接触状態の把握が小数歯に限られ、義歯全体の接触状況を解析できない点で、センサのチャンネル数を増やしこれに対処する予定である。
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