人口の高齢化に伴い老人歯科医療の充実が要求されている。一般に老人の口腔は多数の歯牙が欠損しており、歯牙の欠損により支持を失った口唇・頬など顔面を構成する軟組織の機能は著しく阻害され、いわゆる老人性顔貌を呈することになる。そこで当教室では義歯による適切な顔面形態・機能の回復を目指し、顔面表層の動態の解析を進めてきた。ステレオ写真を用いた三次元測定システムにより、無歯顎患者において義歯装着の有無による顔面表層の動きの差異について検討した。また当科に付設された顔貌シミュレータにより補綴後の顔貌回復のシミュレーションに関する研究を進めている。これらの研究成果から、顔面表層の動態・顔貌回復の要件は口角部であることが判明した。そこでさらに当教室開発の3-D AUTO TRACKING SYSTEMにより機能時の口角の動きを三次元時系列データで取得し解析を進めている。本研究では、多機能ゲートウエイETHER-Gateを介して顔貌シミュレーションシステムと3-D AUTO TRACKING SYSTEMを結合することにより、顔面全体の動態と口角の動きのデータを統合し、口角の動きを主体とした顔面表層動態の簡潔な記述法を確立し、効率のよいデータベースを構築することを目的としている。 多機能ゲートウエイETHER-Gateは顔貌シミュレータのサーバーNEWS-911と3-D AUTO TRACKING SYSTEMのホストコンピュータをイーサネットで結合するものであり、これにより3-D AUTO TRACKING SYSTEMから口腔機能時の口角の動きの三次元データをダイレクトにシミュレータに入れることが可能となった。現在、3-D AUTO TRACKING SYSTEMにより各種食品咀嚼時における口角運動データを多数例採取し、口角運動のモデル化を行なっているところである。
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