I.方法 骨結合型インプラントのApatite 2-piece Implantを臼歯部遊離端部に2本以上埋入した被験者4名の協力を得て、下顎運動時の下顎骨体の変形量を定量的に測定した。インプラント間の相対的位置変化量を下顎骨体の変形量とみなし、磁器センサーを応用した測定装置にて頬舌方向の一次元で測定した。精度は1mumである。下顎運動はホトセンサーを使用してモニターした。出力はデジタルデータレコーダに記録したのち、データ転送装置を経てパーソナルコンピューターに取り込み、解析を行った。 下顎運動は前方滑走運動、習慣性開口運動をおこなわせた。 II.結果ならびに考察 片側の下顎大臼歯部に約10mmの間隔で埋入されたインプラントの位置関係は、近心インプラントを基準としたとき、遠心インプラントが最大開口位で8〜25mum、最前方位で10〜37mumの舌側への変位が認められた。また、軽く開口した状態、ならびに切端位においても同方向への変位が認められた。変位は、前方運動ならびに開口運動時ともに、下顎運動開始と同時に認められたが、開口運動時には遅れるケースも認められた。 これらの結果は、下顎大臼歯部の局所的な部位であっても、通常の下顎運動で下顎骨体は変形を生じていることを示唆するものである。また、変形は外側翼突筋の筋活動と同調する傾向を示している。 補綴学的には、歯根膜が無い骨結合型インプラント同志を強固に連結固定した場合、咬合のみならず下顎運動によってもインプラント歯根的ならびにその周囲骨組織に応力が集中する可能性が示唆され、インプラントの上部構造を考えるうえで重要な問題と考えられる。
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