今回、我々は主に院内感染の基礎的研究であるところの消毒処置後の印象および模型の寸法精度、強度などに関する研究を行なった。 感染症患者補綴治療においては、細菌やウイルスの飛散のコントロールや術者の防御だけでなく、診療後の印象や模型の消毒処置も大きな問題となる。これは、きわめて精度の高い適合性が要求される補綴物制作のための印象や模型の消毒処置後の変形や、面荒れが、時として治療内容や時間を大きく左右するためである。 まず、消毒方法に関しては、シリコン印象材(付加重合型2種類、縮重合型2種類)では、オートクレイブ、次亜塩素酸ナトリウム、ホルマリン、グルタルアルデヒドを用いて、アルギン酸印象材(普通タイプ、抗菌剤含有タイプ、精密タイプ)では、シリコン印象材で用いたもののうち、オートクレイブ以外のすべてをそれぞれの使用規格で消毒を行ない、消毒後の印象の寸法精度を日大材料研土生らの方法に準じて行なった。印象採得に際しては、練和時間や、温度や印象材の経時変化なども考慮し、条件を統一して行なった。さらに、印象採得後、石膏模型作製時に、塩素系の消毒剤(TBS錠)含有水で練和した場合についても、寸法精度を検討した。 また、石膏模型の消毒の効果に関しては、印象材と同様の消毒法を使用し、寸法精度および表面荒れ、強度について、石膏硬化液(プラスターエイド)を使用した場合の表面保護の効果と合わせて検討した。
|