研究概要 |
表記研究の出発点である「義歯床粘膜面に付着・増殖したCandida albicansが局所で炎症性サイトカイン産生を誘導して,義歯性口内炎発症に係わるのではないか」との作業仮説を検証するための最初のステップとして,鹿児島大学歯学部口腔細菌学教室に保存されたC.albicans菌株のなかから3135(血清型A),1001および3(いずれも血清型不明)を選びそれらの酵母型菌体と3135株の細胞壁画分のサイトカイン誘導作用を検討した。供試菌株はサブロ-培地で培養し,ステ-ショナルフェースの菌を集菌した。細胞壁は凍結乾燥菌体をガラスビーズで破砕して調製した。in vivo実験は,C3H/HeNマウスに予めMDP(細菌細胞壁ペプチドグリカンの生物活性を担う合成標品でマウスのサイトカイン誘導物質に対する反応性を高める作用がある)100mugを静注し,4時間後に3135株の菌体ならびに細胞壁画分各500mugを静注し,その90分後の血清中のサイトカイン活性を測定した。in vitro実験は,健康成人の末梢全血培養にテスト標品(100-0.1mug/ml)を添加し,24時間後の培養上清中のサイトカイン活性を測定した。腫瘍壊死因子(TNF)活性はアクチノマイシンD処理したL929細胞に対する殺作用を,インターロイキン(IL)-6活性はMH60.BSF2細胞増殖刺激作用をそれぞれ指標にして測定した。その結果,3135株菌体はマウス血清中にIL-6活性を誘導したが,明確なTNF誘導活性は示さなかった。なお同菌の細胞壁画分を注射されたマウスはアナフィラキシ-様反応を示し,全例1時間以内に死亡した。従って,血清サイトカインは測定できなかった。ヒト全血培養系では供試3菌体ならびに細胞壁画分の何れもがIL-6ならびにTNF活性を誘導した。なかでも細胞壁画分の活性が最も強かった。今後,細胞壁画分の活性構造を追究すると共に,ヒト口腔粘膜の上皮細胞や線維芽細胞培養でのサイトカイン誘導作用等についても検討したいと考えている。
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