口腔の機能状況の良否は、口腔、顔面の運動の様相からも推測できるものと思われる。そこで、高速VTRシステムを用いて咀嚼時の切歯点と皮膚上の標点の運動様式を解析した。また、咀嚼機能の変化を評価するために各処置段階における発色チューイングガムと口腔運動経路を比較した。 被検者に義歯装着状態で発色チューイングガム1.5gを自由に咀嚼させ、50ストローク毎の顔面正面と側貌を2台のテレビカメラで高速ビデオ(HSV‐500、nac社製)に記録した。咀嚼後のガムの厚さを3mmにプレスし、今回科学研究費補助金で購入した色彩色差計(CR‐300 MINORTA社製)で標準白色板上で測定し、CIE L^*a^*b^*表色系におけるa^*値を測定した。さらに続けて同一ガムを咀嚼させ、50ストローク毎に色を測定しながら計300ストロークの運動を記録した。記録したビデオテープを画像解析装置によりオートトラッキングして自動解析し、各標点の三次元座標を求めコンピュータに転送して立体構築した。 その結果、義歯装着時には各段階でa^*値が大きくなり、咀嚼の進行に従い均等な咀嚼が行えている。切歯点では咀嚼の後半には左右方向への運動がリズミカルになる。モダイオラスでは上下的運動は切歯点とほぼ同調しているが、水平的運動は独自のパターンとなるものと思われた。TH、すなわち進行方向に対する立体的な方向変更角度は、一般的に咀嚼の進行に従って減少し、運動がスムーズになっていることが示唆された。
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