研究概要 |
1.緒言 レーザ加工の表面改質により、疲労破壊に強い日本刀(表層は硬く,芯部が軟らかい)のような鋳造クラスプの作製を目的とする。今回は、(1)レーザ照射による金銀パラジウム合金の硬化機序,(2)規則格子を形成せず硬化(一般的には、硬化はPdCuの規則格子の析出)するAg-Cu合金の組成範囲,(3)アモルファス合金の作製の実験を行った。 2.実験方法 (1)金銀パラジウム合金(キャストウェルM.C.ジ-シ-社製)にYAGレーザ(パルス幅4.5〜9.0ms,レーザエネルギ10〜22J)を照射した表面のビッカース硬さを測定し,X線回析,EPMA回析を行った。(2)alpha_1相(Cu-rich)とalpha_2相(Ag-rich)の固溶限の変化で硬化するAg40%-Pd32.5-Cu27.5合金をもとにしたAg-Pd-Cu合金を溶製した。Ag-Cuの共晶点温度(779℃)より高い800℃の電気炉内で12,60秒間加熱し、硬さを測定した。(3)ガラス化能が極めて高く10^3C/sec程度の臨界冷却速度でアモルファス化するPd77.5%-Cu6.0-Si16.5合金を溶製した。レーザ(パルス幅0.2〜0.8ms,レーザエネルギ0.1〜22J)を照射し、X線回析を行った。 3.結果(1)パルス幅7.0ms,レーザエネルギ15Jの表面硬さは、287HV(鋳造体の硬さは210HV)に達した。鋳造面と照射面のX線回析図を図1に示した。レーザを照射することにより、鋳造面のalpha_1相とalpha_2相が消失した。また、EPMAの結果でも鋳造面のalpha_2相はレーザを照射すると消失した。よって、レーザによる硬化はalpha_2相の固溶限ノ変化によるものであった。(2)Ag50%-Pd35-Cu15,Ag35%-Pd40-Cu25の合金を800℃の電気炉に12秒間入れると、鋳造体より36.5,48.5HV硬くなった。(3)今回の照射条件では、アモルファス合金特有な幅広いブロードなX線回析図は得られなかった。
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