研究概要 |
義歯の使用を中止する第一の原因が義歯の破損や変形であるという事実から,義歯の最適設計ついて力学的観点より検討を加えるため本実験を行った. 実験に使用した試験片フレームワークは4種の義歯構造(二重構造,トラス構造,T字断面,長方形断面)と3種の支台装置(全面被覆型,唇側面開放型,近遠心レスト型)を設計し,コバルトクロム合金を用いて,それぞれの組合せで5個ずつの計60個を鋳造製作した.支台装置に金型支台を嵌合させ,これに荷重ロッドを接続し,単純曲げ形式の静的曲げ試験を行った.また支台装置辺縁部,隣接面部,咬合面部の3ヶ所にストレインゲージを貼付し,パーソナルコンピュータを使用して,最大剛性,降伏点荷重量,ひずみを同時計測し,以下の知見を得た. 1.最大剛性は二重構造,トラス構造,T字断面がほぼ等しく,長方形断面の約10倍の値であった. 2.降伏点荷重量は二重構造が最も大きく,トラス構造,T字断面の約1.5倍,長方形断面の約7倍を示した. 3.全面被覆型,唇側面開放型の最大剛性と降伏点荷重量は義歯構造によらず,ほぼ同等であるが,近遠心レスト型は約1/4と著しく小さな値を示した. 4.20kgf荷重時の辺縁部,咬合面部のひずみはフレームワークの強度が向上するに従い大きくなり,隣接面部では逆に小さくなる傾向を示した. 5.義歯の破折強度の向上にはフレームワークの構造設計と共に支台装置の選択,設計の重要性が示唆された.
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