市販の3種類の光重合コンポジットレジンを使用し、光照射器として光強度の経時的変動の小さかった New Light VLII(GC)を使用した。光強度は照度計を用いて測定し、照射距離を変化させることによって光強度を変化させた。使用した光照射器の光強度が光照射30秒後にほぼ一定に達したことから実験では30秒後から所定の時間照射した。種々の光強度で重合した光重合コンポジットレジンの硬化深さ、硬化体内部の反応率、ペンダント二重結合量および残留モノマー量の各々の分布を調べ、これらに及ぼす光強度の影響を調べた。 光強度と照射時間の積(照射量)が一定ならば、いずれの材料においても硬化深さは一定値を示し、硬化体内部の反応率、ペンダント二重結合量、残留モノマー量の各分布もよく一致した。このことから照射量が臨界照射量以上であり、かつ、同じであれば、強い光を短い時間照射した場合と弱い光を長い時間照射した場合とでいずれも同一の硬化体が得られること、また、重合は照射量によることが示唆された。この結果を基にして、重合過程で起こる吸光係数の変化および硬化体内部の重合状態の違いによる吸光係数の違いが小さく、無視できると仮定すると、硬化体を透過した光強度I_tはランベルトの法則によりI_t=I_0・10^<-epsilonL>で表され、ここで、epsilonは材料に固有の吸光係数、Lは硬化深さ、I_0は照射する光強度である。t時間照射した時、硬化したレジンと未硬化のレジンの境界面に到達する照射量Eは、E=I_t・t=I_o・t・10^<-epsilonL>で表され、これ以下の照射量ではレジンは硬化しない臨界照射量である。いずれの材料においても硬化深さと照射量との間に強い対数関係があり、使用した光照射器に対する材料の吸光係数epsilonおよび臨界照射量Eを求めることができた。この臨界照射量を照射するといずれの材料においても表面がわずかに硬化したが脆く崩れてしまった。従って、この論理の妥当性が示唆された。
|