顎関節症の主症状うち、顎関節の運動と共に発生する顎関節雑音は、顎関節症患者に多くにみられ、顎関節症の病態をあらわす重要な要素の一つである。 その研究の過程で、申請者は顎関節雑音が顎運動時の下顎頭の急激な変化によって発生することに着目し、顎関節雑音発生時の下顎頭の運動を3次元的な加速度として測定する方法を考案した。今回は、この装置の信頼性を確認するための検討を行った。 1.シミュレーターに、申請者の作製した下顎頭加速度測定装置を装着し、シミュレーターの下顎頭部に発生する加速度の方向、強度をモニターで確認しながら下顎頭部に加速度を発生させた。 2.その時の、下顎頭加速度測定装置に発生する信号を振動計にて増幅した後、アナライジングレコーダーへ取り込み、加速度を各方向のベクトルに変換し、加速度の方向および大きさを算出した。 3.この結果、実際に下顎頭に作用する加速度と、本装置で測定される加速度とは、X軸方向の相関係数0.99、Y方向の相関係数0.94、Z方向の相関係数0.96で、極めて高く、本装置の信頼性が確認された。 4.また、実際に顎関節雑音の発生する被験者で、本装置を用いて測定を行った。それとともに、MRIの撮影を行い、本装置による測定結果と比較した。 5.MRIによる診査結果で予測される下顎頭運動と、本装置の測定結果は、必ずしも一致しなかったが、これは、本装置が微妙な下顎頭の運動を捉えることが可能なため、MRIで診査不可能な病変にも影響されたためと考えられ、顎関節構造の詳細な検討にも供されうることが示唆された。
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