研究概要 |
多剤耐性タンパク質(P-糖タンパク質)のATPaseとしての基本的な性質を理解する一環としてNa^+,K^+-ATPaseの酵素化学的性質を研究し以下の結果を得た。 N-[p-(2-benzimidazolyl)pheny]maleimide(BIPM)とfluorescence isothiocyanate(FITC)でそれぞれCys-964とLys-501を修飾したNa^+,K^+-ATPaseをphospholipase A_2や蛍光消光剤で処理し反応中間体形成に伴うBIPM probe、FITC probe、トリプトファン残基とATPaseに含まれるリン脂質の相互作用を解析した。 反応中間体形成にともない、リン脂質の炭化水素鎖とBIPM probe、FITC probe、トリプトファン残基の相互作用が変化すること及び消光剤による消光の程度が異なることが示された。これらのことより、Cys-964とGlu-953は酵素の比較的表層近くにあり、Thr-955とSer-962は酵素の比較的中心近くにあるということが示唆された。 また、Na^+,K^+-ATPase標品を用いたBIPM probeからFITC probeへの蛍光エネルギー移動をアセチルリン酸を用いて解析したところ、CyS-964に結合しているBIPM probeとLys-501に結合しているFITC probeの間の距離は約36Åと推定された。 今後、さらにいくつかの基礎実験を重ねたうえで多剤耐性タンパク質(P-糖タンパク質)に関する生化学的研究を進めたいと考えている。
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