7週齢雄Wistar系ラットの下顎歯槽部骨膜下に燐酸オクタカルシウム(以下OCP)を埋入し、埋入後1、2、4、8週について骨形成の可能性および生体親和性を検討した。OCPの合成はLeGerosの方法により32〜48メッシュのものを用い、OCP移植群、対照群ともに各期間4匹のラットを用いた。0.1Mリン酸緩衝4%パラホルムアルデヒドで灌流固定し、軟X線写真を撮影後、ギ酸、クエン酸ナトリウム液で脱灰後HE染色を行った。 1.軟X線所見では埋入1週では移植部位でのX線不透過像は不明瞭だったが、埋入2週では移植部位に対応した不透過像の亢進を認め、埋入4週以降では母床骨に比較的近い不透過像を示し、埋入8週まででは明らかな吸収傾向は認められなかった。 2.組織学的には埋入1週でOCPに有機質が吸着し、移植OCP(以下I-OCP)周囲を多数の結合組織性の細胞が密に取り囲んでいた。2週以後はI-OCP周囲に添加性骨形成が明瞭に認められ、それらは経時的に増大し、I-OCPは凝集あるいは消失傾向を示した。埋入4週以降では新生骨がI-OCPを取り囲む像も認められた。8週までの観察では新生骨の吸収傾向は明らかではなかった。 3.対照群ではすべての期間において手術部位に対応するX線不透過像の増大は観察されず、同部における歯槽堤増大や骨形成は認められなかった。 以上よりOCPによる骨形成の可能性および歯槽堤増大におけるOCPの有用性が示唆された。 第47回日本口腔科学会総会において研究の一部を発表し、日本口腔外科学会雑誌39巻12号に研究成果を発表した。現在、透過型電子顕微鏡を用いて移植実験による骨形成の超微細的形態学的研究を行なっている。
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