近年、下顎枝矢状分割後の骨固定に金属スクリュウが用いられているが、時にスクリュウが体表から触れたり、異物反応を生じるなどいくつかの問題がある。本研究では、下顎枝矢状分割後の骨接合に近年開発された分解吸収性の有機性高分子ポリ乳酸スクリュウを用い、さらにこのポリ乳酸に骨誘導能を有する生理活性物質、骨形成因子(BMP)を配合し、より早期に確実な骨接合が可能な手術法の確立を目指していた。本研究過程において我々はポリ乳酸プレートおよびスクリュウの人手が可能となり、既に顎変形症症例の骨接合に応用して良好な結果を得ている(第48回日本口腔科学会総会にて発表準備中)。また、本研究では骨形成因子を独自の製法でポリ乳酸と配合し、骨形成因子-ポリ乳酸複合体の作製に成功しており、同複合体をラットの頭蓋骨欠損部に移植して良好な骨形成を誘導し得ることも証明した(Journal of Oral and Maxillo-facial Surgeryに掲載予定)。しかし、物理的強度の点で、顎変形症症例に応用できる骨形成因子-ポリ乳酸複合体の開発に未だ至らず、今後の研究課題といえる。従って、今後は骨形成因子-ポリ乳酸複合体よりなるスクリュウあるいはプレートを用いた下顎枝矢状分割後骨接合のモデル実験を行いその物理的強度を比較検討する予定である。なお、臨床応用するにあたり問題となるヒト骨形成因子の人手であるが、遺伝子工学的に合成したヒト骨形成因子が良好な骨誘導を起こすことは既に報告されており、当面は我々の精製したウシ骨基質からの骨形成因子を用いて動物実験を行うことで顎変形症症例に応用し得る骨形成因子-ポリ乳酸複合体の作製法を確立しておけば、ヒト骨形成因子-ポリ乳酸複合体スクリュウあるいはプレートによる顎変形症治療に即応できるものと確信する。
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