研究概要 |
将来、骨形成因子が臨床使用される場合、これからの高齢化社会に加え、骨の損失部分に使用することが多いため、高齢者への適用頻度が非常に高くなると考えられる。そこで本研究では、骨形成因子活性の受給者側の加齢に伴う変化を観察するとともに、高齢者のかなり条件の悪い組織内にでも、十分な骨誘導が得られる様な応用方法を検索,追求する事を目的とした。 本研究では、5,10,20,40週齢Wistar系ラットを使用し、骨形成因子活性の被埋入動物側の加齢に伴う変化を観察した。別所らの方法で精製したウシ骨基質由来骨形成因子1mgに atelopeptide type I collagen 9mgを担体とし、ラットの下腿部筋肉内に埋入した。埋入3週後、軟X線撮影を行った後、摘出し、組織学的観察を行うと共に、アルカリフォスファターゼ活性,カルシウム濃度を測定し、骨形成量の指標とした。その結果、加齢に伴い、多少の骨誘導能の低下を認めたが、40週齢のラットの筋肉内にでさえ、5週齢のラットの50%以上の新生骨誘導を認めた。 本結果は、10週齢以上ラットでは骨形成因子は骨を誘導し得ないという以前にいくつかの施設で行われた結果とは異なり、高齢者にも骨形成因子による骨誘導が起こり得る可能性を示唆した。この結果は将来の骨形成因子臨床応用の際、適用範囲をかなり拡大するものと考えている。また、本研究で担体として使用したatelopetide type I collagenは骨形成因子活性を発現させる徐放系として有効な材料であり、臨床応用の際に有用であることが示唆された。
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