骨芽細胞の分化におよぼす血小板由来成長因子(PDGF)の影響を検討するため、本研究では、骨芽細胞の産生するオステオカルシンに注目した。オステオカルシンは骨芽細胞が分化し石灰化するにしたがって、その産生が亢進ことが知られている。また、PDGFは骨芽細胞の増殖を促進し、この増殖促進機構にはPDGFレセプターのチロシンリン酸化が関与していることも知られている。そこで、本研究では色々な段階の培養骨芽細胞にPDGFを添加し、その培養上清中に産生されたオステオカルシン濃度を測定することにより、骨芽細胞の分化におよぼすPDGFの影響を検討した。 骨芽細胞は、顎裂部への腸骨海綿骨移植術において得られた正常ヒト腸骨海綿骨より分離、培養した細胞を用いた。細胞は10%FBSを含むalpha-MEMにて継代培養し、実験には継代5代目の細胞を用いた。培養6日目、12日目および18日目の細胞を、それぞれ増殖期、石灰化前期および石灰化後期とした。それぞれの細胞を血清無添加で、0.1%BSAを含むalpha-MEMで24時間培養した後、0、1、10および100ng/mlのPDGFを添加し、24時間後に培養上清を採取、上清中に産生されたオステオカルシンをTaKaRa Gla型 Osteocalcin測定キットにて測定した。また上清採取後のディッシュをvon Kossa染色し石灰化の確認を行った。 実験の結果、それぞれの時期での骨芽細胞で、PDGFは濃度依存的にオステオカルシン産生を促進した。また、PDGFによるオステオカルシン産生の促進は、培養18日目の石灰化後期の細胞で最も著明であった。さらにPDGFの濃度に依存して、石灰化の亢進が認められた。これらのことより、PDGFは骨芽細胞のオステオカルシン産生を促進させ、これが骨芽細胞の石灰化の亢進と関連している可能性が示唆された。
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