F344系ラット(3週齢、雄)の大腿骨および脛骨より可及的無菌下に摘出した骨髄組織を骨髄本来の組織構築を維持したままタイプIコラーゲンゲル内に包埋し、培養を行った。培養液は、10%牛胎仔血清、50mug/mlL-アスコルビン酸、60mug/mlカナマイシンを含むalpha-MEMを用いた。培養下における骨髄組織の経時的変化を観察するため、培養開始直後、培養1、3、5、7、10、14、21、28日目に骨髄組織を周囲のコラーゲンゲルを含めて10%中性緩衝ホルマリンにて固定し、エタノール系列にて脱水、ハイドロキシエチルメタクリレート樹脂に包埋し、4℃で重合させた。続いて厚さ3mumの組織切片を作製し、ヘマトキシリン-エオジン染色、トルイジンブルー染色(pH4)を行った。さらにカルシウムを検出するためにアリザリンレッドS染色、リン酸カルシウムを検出するためにvon Kossa染色、アルカリ性ホスファターゼ活性を検出するためにナフトールAS-BIリン酸を基質としたアゾ色素法による染色を行った。この結果、培養7日目よりコラーゲンゲル内に線維芽細胞様細胞の増殖がみられ、これらの細胞はアルカリ性ホスファターゼ活性を有していた。さらに培養28日目では一部石灰化が認められた。また本培養系にさらに5mMbeta-グリセロリン酸を添加し同様の実験を行ったが、明らかな石灰化促進は認められなかった。この石灰化物につき現在引き続き電子顕微鏡レベルでの確認を行っており、今後さらにx線微小分析、電子線回折等を行う予定である。 本研究により、骨髄間質細胞はコラーゲンゲル内においても骨原性細胞に分化し得ることが示唆されたが、骨あるいは軟骨の組織構築を実現するためにはさらに適切な培養条件等の設定が必要と考えられた。
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