研究概要 |
塩酸リドカインはどの程度、ベンゾジアゼピン(BZP)受容体に抑制的な影響を与えるか検討した。すなわち、in vitroでラット全脳より調整したシナプス膜可溶化分画に含有している、BZP受容体に対する影響を塩酸リドカインと拮抗薬フルマゼニールで比較検討した。 その結果、[^3H]フルニトラゼパムのシナプス膜可溶化分画に対する結合のスキャチャードプロット解析は Kd=2.96 nM,Bmax=0.97 pmol/mg proteinとなった。この結果からgamma-アミノ酪酸(GABA)_A受容体・BZP受容体・CI^-チャンネル複合体の存在が確認できた。[^3H]フルニトラゼパムのBZP受容体シナプス膜可溶化分画に対する結合量は0.209±0.014 pmol/mg protein〔(mean±S.D.)コントロール、100±6.9%〕となった。100nM 塩酸リドカインは[^3H]フルニトラゼパムの受容体結合を79.2±5.0%(mean±S.D.)まで有意に減少させた。また、BZP受容体拮抗薬である 100nMフルマゼニールは3.9±2.5%(mean±S.D.)まで有意に減少させた。GABA_A受容体作動薬の10muMムシモールにより、[^3H]フルニトラゼパムの受容体結合は 156.1±10.1 %(mean±S.D.)まで増加した。この状態で100nM塩酸リドカインを添加すると117.1±12.5%(mean±S.D.)まで減少し、100nM フルマゼニールは9.5±6.8%(mean±S.D.)まで減少した。120 mM NaCIにより、[^3H]フルニトラゼパムの受容体結合は 138.5±10.5%(mean±S.D.)まで増加した。この状態で100nM塩酸リドカインを添加すると120.8±14.0%(mean±S.D.)まで減少し、100nMフルマゼニールは4.8±3.1%(mean±S.D.)まで減少した。100nMでは塩酸リドカインとフルマゼニールで有意差を認め、フルマゼニールがより多く減少させた。したがって、BZP受容体に対する塩酸リドカインの影響はフルマゼニールより有意に少ない事が認められた。 以上の結果から、塩酸リドカインはGABA受容体・BZP受容体・CI^-チャンネル複合体に対し抑制的に作用した。しかし、BZP受容体に対し拮抗的に影響しない事が示唆された。
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