研究概要 |
Actinobacillus actinomycetemcomitans(As)は、宿主の生体防御にとって有益な好中球を選択的に傷害するロイコトキシンを放出する。活性化好中球は、活性酸素産生やライソゾーム酵素放出によって感染防御に貢献する一方で、これらの防御因子が不適当に発生すると組織障害などをもたらす。そこで、私はAaロイコトキシンの病原性をより明確にするためにロイコトキシン、好中球及び歯肉由来の線維芽細胞の相互作用について実験し以下の結果を得ました。 Aaロイコトキシンは細胞内のLDH放出測定によると、単独培養では濃度依存的に好中球を傷害しますが、線維芽細胞に対しては障害を示しませんでした。しかし、トキシンはPKH‐2細胞蛍光標識キットを用いた実験で、好中球と線維芽細胞の混合培養すると線維芽細胞は傷害されずに付着性のみ損傷されることが明らかになりました。また、この線維芽細胞の付着損傷は中性プロテアーゼインヒビターであるPMSF、Eglin,alpha_1‐protease inhibitorあるいは血清の添加によって抑制されました。一方、線維芽細胞の付着低下は酸性プロテアーゼインヒビターであるpepstatinA、O_2^-の消去剤であるSOD、H_2O_2の消去剤であるカタラーゼに添加よっては影響されませんでした。 これらの結果よりAaロイコトキシンは好中球を傷害し、間接的に線維芽細胞の付着損傷を促すことが示唆されました。種々の抑制剤を用いた結果より、好中球の顆粒成分であるエステラーゼやカテプシンGなどの中性プロテアーゼが付着損傷に強く関与していることも推察されました。今後は、線維芽細胞の付着能を損傷する好中球因子及び損傷される線維芽細胞の付着因子を明確にしたいと考えております。
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