研究概要 |
全身麻酔が免疫能に及ぼす影響について現在までの研究では、PHA幼弱化反応を用い、患者末梢血リンパ球のDNA合成能について評価した。結果は麻酔導入直後にDNA合性能の有意な低下を認め、覚醒後も回復は見られなかった。 また、リンパ球サブセットについては、CD3陽性細胞は麻酔導入直後 有意に低下し、覚醒後に回復傾向が見られた。CD4陽性細胞は導入直後有意に低下しCD8陽性細胞は導入直後有意な上昇を示した。覚醒後これらは術前とほぼ同じ値に回復した。したがって、全身麻酔はT細胞の関与する細胞性免疫を短時間で抑制することが示唆された。 本年度は、液性免疫能に全身麻酔が及ぼす影響について評価する前に、対照として局所麻酔症例(全身麻酔症例と浸襲がほぼ同程度のもの)のDNA合性能とリンパ球サブセットの変化について検討を行った。結果は、局所麻酔では術中の患者末梢血リンパ球のDNA合性能低下は認められなかった。また、リンパ球サブセットの変化では手術開始直後よりCD3陽性細胞は低下し、手術終了後30分で回復傾向を示した。CD4/8比も手術開始直後より低下し、手術終了後30分で回復した。以上の結果より、全身麻酔手術中のDNA合性能の低下には、吸入麻酔剤が影響していると考えられた。また、CD4/8比の術中の低下は全麻症例、局麻症例ともに認められ、手術浸襲の影響が示唆された。 以上、細胞性免疫について考察したが、今後さらに液性免疫に及ぼされる影響について評価し、術後感染の問題 担癌患者における腫瘍の転移,増殖の危険性について検討する。
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