研究概要 |
顎舌骨筋に分布する顎舌骨筋枝(顎舌骨筋神経)の中枢側切断端にhorseradish peroxidase(HRP)を注入し、顎舌骨筋筋紡錘を支配する一次求心線維の起始細胞の分布様相を観察した。実際には生後8-10週のWistar系雌ラットを用いた。チオペンタール腹腔内麻酔の後、保温パッド上に固定した。手術用顕微鏡下で下顎骨内面に沿ってオトガイ下部から顎下部に至る皮膚切開を加え、下顎臼歯部付近で下顎骨内面から顎下部へ走行する顎舌骨筋神経の本幹を確認し、同神経の技である顎舌骨筋枝を可及的に末梢側へ追求した。次に顎舌骨筋枝を切断し、その中枢側切断端を5%KCI溶液を満たした先端直径100muの微小ガラス管で吸引した。その後、KCI溶液を20%HPR(3M KCI,0.05Mトリス緩衝液)で置換することにより、1-2時間神経切断端をHRP溶液に浸潤させた。動物を24時間生存させた後、2%グルタールアルデヒド-1%パラホラムアルデヒド-0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)にて潅流固定を行い、直ちに脳幹を摘出した。摘出した脳幹は30%sugar-0.1Mリン酸緩衝液中に24-48時間浸潤させた後、厚さ60muの凍結連続切片を作製した。HRPの反応はTMB法を用い、光学顕微鏡によりHRP陽性細胞の出現部位の検索を行った。その結果、実験に供した21例で三叉神経中脳路核と三叉神経運動核の腹内側部にHRP陽性細胞で認めた。なお三叉神経中脳路核におけるHRP陽性細胞の数は1検体に1-3個で、分布部位は吻尾側的に中央部だった。すなわち顎舌骨筋筋紡錘は三叉神経中脳路核由来の一次求心線維に支配されることが確認された。
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