小児の顎口腔の成長・発育を考える上で、乳歯から永久歯への歯の生理的な交換は重要である。本研究では、骨においてカルシウム代謝に関与するカルシトニン、およびPTHについて歯根吸収組織における反応の局在を免疫組織化学的に観察し、破骨細胞と破歯細胞の比較検討を行い、その分化について検索する事を目的とした。また予備実験として、破歯細胞のマーカー酵素と考えられている酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRAP)活性の反応を酵素組織化学的に経日的な変化を観察し、その活性状態を検索した。動物は、生後10、13、18、20日齢の日本白色種のウサギ乳切歯を用い、4%パラホルムアルデヒド固定液および、1/2カルノフスキー固定液にて勸流固定後、10%EDTAにて脱灰した。通法に従い、包埋をし、厚さ4mumのパラフィン切片、1-2mumのTechnovit切片を作成した。免疫染色は、PAP法、TRAP染色はアゾ色素法にて行い、光学顕微鏡にて上顎乳切歯歯根表面の破歯細胞の動態を観察した。 TRAP染色を行った結果、吸収初期である10日齢から、吸収後期である20日齢のウサギまで吸収程度、破歯細胞の数の違いはあるがどの時期においても、唇側、口蓋側面ともに破歯細胞は存在し、強い活性反応を示した。特に永久歯胚の存在する口蓋側面の吸収は、唇側面の比較して広範かつ深部にまで達しており、後期のものでは部分的に歯髄に及んでいるものもみられた。歯胚が、歯根吸収に影響を与えていることが示唆されるが、吸収が歯根の両側面にみられることから、何らかの液性因子が関与していると思われる。免疫染色では、PTH、カルシトニンともに反応が認められなかったが、骨に対する反応も微弱で、実験手技上で何らかの問題があったか、または使用した抗体自体がウサギに対する反応性が低い、もしくはなかった可能性もある。それ故、PTH、カルシトニンの局在が否定できるものではなく、今後、抗体に関して、濃度変化による反応性の検討、他種の抗体、動物の使用等について更に研究する必要がある。
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