研究概要 |
う蝕予防填塞材料として我々が試作したリン酸四カルシウムセメントは、カルシウムおよびリンの供給源として作用し、しかもグラスアイオノマーセメントと異なりセメント直下のエナメル質の再石灰化を促進させることが明らかになっている。さらに半萌出の第一大臼歯を用いた臨床試験の結果、本セメントは12ケ月後で約50%のう蝕減少率を示した。しかしながらリン酸四カルシウムセメントには、エナメル質への接着強さがグラスアイオノマーセメントより低いために、口腔内で短期間に脱落するという欠点がある。本研究では、歯質へ接着することが知られているグラスアイオノマーセメントに4CPを配合したセメントを試作し、グラスアイオノマーセメントにリン酸四カルシウムセメントの効果を付与できるかどうか検討した。 グラスアイオノマーセメントはFuji Ionomer TypeIII(FujiIII)(GC東京)を用いたリン酸四カルシウム(4CP)の配合量は0,2,5,10%とした。4CPを10%まで配合しても圧縮強度の低下は認められなかった。しかし硬化時間、圧縮強度、崩壊率、24時間後及び7日後のエナメル質への接着強さを考慮すると4CPの配合量は5%までが適当と考えられた。4CPを5%配合したセメント(5%4CP)の硬化時間、圧縮強度、崩壊率、24時間後及び7日後のエナメル質への接着強さは、それぞれ4分、112.3MPa、0.36%、2.3MPa、2.3MPaであった。また、5%4CPからのカルシウムとリンの溶出量はFujiIIIに比べて浸漬3または4日後まで約1.5から2.5倍に増加したが、その後は有意差を認めなかった。一方、5%4CPからのフッ素の溶出量はFujiIIIに比べて全期間にわたり約90から50%に減少した。
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