今回我々は、障害者歯科臨床における院内感染防止のために、使用方法が簡便な採血用濾紙(デンタルスティック【◯!R】)を用いて患者の血液検査を行い、その結果をもとに、初診時の問診について調査し、検討した。対象は、広島大学歯学部附属病院特殊歯科総合治療部障害者歯科治療室に来院した障害者で、出血をともなう処置により血液検査用の採血用濾紙を用いて血液採取が行え、かつ患者側の承諾の取れた50名であった。1.採血時の歯科処置としては、抜歯、歯石除去、歯槽膿瘍切開、歯磨き、歯牙破折片除去、歯肉切除術、盲嚢掻爬術、歯根切除術で、そのうち最も多かったのは、抜歯の39名で78%を占めていた。 2.血液検査の結果の内訳は、HBs抗原陽性患者は1名で陽性率2%、HBs抗体陽性患者は2名で陽性率4%、ATLA陽性患者は2名で陽性率4%、TPHA陽性患者は認めなかった。年齢は10歳以上30歳未満で、性別は男性が4名、女性が1名、採血方法では抜歯が4名、歯槽膿瘍切開が1名だった。血液検査による陽性患者のうち1名は初診時の問診で確認できていたが、他の4名については初診時の問診では血液検査の結果を予想できなかった。 3.問診結果において、外科的手術や輸血の既往のある患者は保菌者となりうる可能性が高いため、感染源対策のために血液検査を行うべきであると考えられた。 今回の血液検査では観血処置時の出血より採血を行ったが、今後、唾液などを用いてより簡便な操作で行える検査方法を考えていく。
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