研究概要 |
ラット長管骨より10%蟻酸にて脱灰抽出し,C_<18>逆相カラムを用いて,オステオカルシンの最終精製を行った.次に,SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った結果,精製標品が均一であることを確認した.さらに,N末端10残基のアミノ酸配列の分析を行い,精製標品がラットオステオカルシンであることを確認した. 5週齢雄性Wistar系ラットを用い,歯牙移動を行った.精製オステオカルシンをPBSに溶解し,10ng,100ng,1mug,10mug,100mugの投与量とも20mulの容量で,上顎第1臼歯部に4日間連続局所投与した.対照群として,PBSを同様に投与した.実験期間中5回,上顎の印象を採得し,石膏模型上で歯牙移動量を計測した.通法に従い,上顎の凍結切片を作製し,破骨細胞のマーカーである酒石酸耐性酸性フォスファターゼ染色を行った. 1日目より4日目まで対照群と比べ,1mug投与群では有意に移動量が大きいことを認めた。組織学的検索では最も歯牙移動量の大きい1mug投与群では,破骨細胞が骨表面に多数認められた.1視野当りの破骨細胞数を計測した結果,1mug投与群では対象群に比べ,破骨細胞数が約2倍に増加していることが認められた. 対照群に比較して,骨基質蛋白質であるオステオカルシンの投与によって,ラットの歯牙はより速く動くことが示された。オステオカルシンが破骨細胞の前駆細胞に対して走化性物質として働くこと,および破骨細胞の形成において微小環境を整える働きがあることが報告されている.本研究では、in vivoの実験系で外因性のオステオカルシンを局所投与することにより,投与されたオステオカルシンが,破骨細胞の前駆細胞に対し走化性物質として,あるいは破骨細胞の形成を促進することによって,局所の破骨細胞数が増加し,その結果骨吸収活性が亢進し、歯牙が速く移動する可能性が推察された。
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