基礎実験として、S.D.系ラット5匹を用い上顎骨側方拡大法の確立を行った。ラットの口腔内に合わせたトレーを作製し、シリコン印象材(EXAFLEX、GC)で上顎歯列を印象し、超高石膏で作業模型を作製した。模型上で拡大装置を作製し、ラットの口腔内に装着した。本研究では、この拡大装置に工夫を重ね、脱落率の少ない確実な方法を検討した。その結果、上顎前歯を固定源としたループ付ワイヤーによる装置を考慮し、実験の再現性が得られやすいことを確認した。 次に、S.D.系ラット12匹を6匹ずつ2群に分け、ウレタン・ネンブタールおよびエーテル麻酔下に一方には側方拡大を行い、もう一方には装置の装着のみを施した。側方拡大を4週間行った後、常温重合レジンで固定し、bFGF(Sigma)を正中口蓋縫合部に3日おきに21日間局所投与した。bFGF投与前日にはカルセインを、屠殺前日にはテトラサイクリンを腹腔内投与しておき、骨のラベリングを行った。現在、上顎骨を切り出し、脱灰標本と非脱灰標本を作製中である。なお、非脱灰標本の作製にあたっては、新たに骨形態計測法に有用なvillanueva Bone Stain(マルト-)を適用し、新生骨の形成度が明確となるようにした。非脱灰標本の作製終了後、骨形態計測システム(システムサプライ)を用い、蛍光顕微鏡下で各種骨形態計測パラメーターを算出する予定である。また、脱灰標本については、通法のヘマトキシリン・エオジン染色に加え、骨芽細胞の指標となる酸性フォスファターゼ染色を低温重合樹脂(Technovit 7100、盟和商事)を用いて検討している。
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