本研究課題は、歯科集団検診におけるピックアップ付探針の開発であった。振動ピックアップ付探針は、振動ピックアップを歯科用探針に即時重合レジンで付着し、振動ピックアップで拾った音を振動増幅器を通し、スピーカーから検査者の耳に入れるよう作製した。実験室内で、抜去歯に充填し研磨の仕上がり段階を3種類に設定したグラスアイオノマーセメントおよび各種光重合レジンについて、上記の振動ピックアップ付探針を用いてエナメル質と各充填面の擦過音を直接拾い、レコーダーにて記録し条件設定を行った。被検者5人に各種擦過音を聞かせ、エナメル質擦過音との聞き分け試験を行った。その結果、スーパースナップシステムによる研磨面については3名が聞分けが困難であったが、ホワイトポイント及びペーパーコーンによる研磨面については充填物の種類に関係なく5人全員が聞き分けることができたため、臨地応用を試みた。 松戸市内の某幼稚園にて、対象者120人について集団歯科検診を実施した。その結果、ピックアップ付探針を使用した平均F歯数の方が歯科用探針を使用したそれに比較して高値を示したが、平均値間に有意差は認められなかった。従って、ピックアップ付探針を用いた聴診視診複合型検診の導入により、検出漏れを防ぐことが可能といえる。しかし、ピックアップ付探針を使用した際の検診時間が、歯科用探針使用時の1.5倍要した。 今回の問題点は、臨床の現場でレジン充填歯の研磨作業がよく施されているため聞き分けが予想以上に困難であること、さらに60人という集団検診において聴診視診複合型検診は検査者に与える疲労が大きく、検診速度を著しく低下させてしまったということであった。従って、再現性と精密生とある程度の速度を要求される歯科集団検診において、1歯を歯面ごとに診なければならないピックアップ付探針の開発は、今後に大きな課題を残した。
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