鼻咽頭疾患による気道狭窄は口呼吸をもたらし、顎顔面の成長様相や矯正歯科治療後のあと戻りに影響を及ぼす。一方、口唇裂口蓋裂者の上歯列は狭窄し、大部分の症例に上歯列の拡大が必要となる。 本研究は上歯列拡大による咽頭扁桃の変化と顎顔面の成長様相との関連性を解明する目的で、口蓋裂単独者について検討した。 被検者は当科を受診した女子口蓋裂単独者7名(6歳4カ月から10歳11カ月)を口蓋裂群、上歯列側方拡大を行ったAngle I級女子不正咬合者6名(7歳1カ月から13歳7カ月)を対照群とした。 上歯列拡大前後に中心咬合位で撮影した側面頭部X線規格写真を資料とし、角度的計測項目10項目、距離的計測項目6項目について計測した。咽頭扁桃計測項目はS、Baの中点をSoとし、PnsからそれぞれBa、Soを結んだ線と咽頭扁桃の大きさAO3、AO4とした。各咽頭扁桃計測項目と側面頭部X線規格写真計測項目との相関関係を分析し、以下の結果を得た。 1)咽頭扁桃は口蓋裂群に対して対照群の方が大きかったが有意差は認められなかった。 2)咽頭扁桃の大きさは口蓋裂群の下顎下縁平面角、下顎枝高で有意差が認められた。 3)対照群と比較して口蓋裂群は上歯列拡大後、AO3の増加量が大きくなる傾向が認められた。
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