研究概要 |
〔実験目的〕sealantの保持力を長期にわたり安定したものとするためには,窩溝開口部における内斜面エナメル質の強固な接着が必要であり,そのための十分な酸処理効果が必要である。しかし,窩溝部表層エナメル質は,萌出後,唾液,食物等の外的環境に接することによって石灰石が促進されるpost eruptive maturationがある。さらに,エナメル質表層には構造的にみて,耐酸性のある無小柱エナメルが存在しているため,期待する酸処理効果が,得られていないように思われる。そこで今年度は,sealantの接着にとってマイナス要因と言われている無小柱エナメル質に着目し,萌出直前の未萌出第一小臼歯をコントロールとして,萌出後3年以内のものの小窩裂溝部無小柱エナメル質へのsealantの浸透状態の観察を走査型電子顕微鏡にて行った。 〔実験方法〕矯正治療の目的で抜去されたヒト未萌出下顎第一小臼歯10歯,萌出後3年以内の下顎第一小臼歯10歯計20歯を,♯6K-fileを付した1/4power down型超音波発振装置とGK101液を併用して清掃後,40%リン酸ゼリーで40秒間処理し,高粘度のsealantと低粘土のsealantを,それぞれの歯牙につき5歯ずつ填塞後,20秒間放置し,光照射を行い,縦断連続研磨標本を鏡面研磨し,SEMにて観察した。 〔結果および考察〕従来無小柱エナメル質は,酸に抵抗する組織として,sealantの接着に不利と言われてきた。しかし,今回,未萌出歯,萌出後3年以内の歯について検討した結果,小窩裂溝部無小柱エナメル質が存在することは少なかった。高粘土のsealantでは,この無小柱エナメル質へのsealantの浸透はみられなかった。しかし,低粘土のsealantでは,未萌出歯,萌出歯とも無小柱エナメル質の部分への浸透が確認できたことから,無小柱部は有小柱部に比べると酸処理後の小孔は超微細ではあるが,脱灰は十分に行われていると考えられる。
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