申請者らのグループで開発したシクロペンタノイド誘導体の触媒的不斉合成法はPdへの酸化的付加時にエナンチオ場を選択するという反応であり更なる展開が可能であると考え、検討を行なった。本反応を含窒素二環性化合物の触媒的不斉合成へと展開すべく、基質1に対しアミド型の求核剤2aを用い検討した。その結果、塩基として水素化ナトリウムを用いた場合は3aが2%ee程度でしか得られないのに対し、LDAを用いた反応においては最高57%eeの選択性で3aが得られた。これらの結果から、求核剤として2aを用いた反応においてはアミド基のNがPdに配位し、4のように配位子の部分乖離を引き起こし選択性の低下を招くと考えられ、これに対し塩基としてLDAを用いた反応ではLiにNがキレーションした5のような形で安定化し反応が進行するため、高い選択性が得られたと考えられる。求核剤として2bを用いても反応は良好に進行し、3bが収率64%、40%eeで得られた。3bは更にPd触媒で閉環させた後、脱炭酸反応により6へと導いた。6は分子内Heck反応によりテトラヒドロインドリノン誘導体7へと交換でき、さらに2工程を経て(+)-gamma-Lycolane8へと導くことができた。これらの結果は、8を光学活性体として合成した初めての例であり、また非常に短工程で高率の良い合成ルートを確立できた点からも興味深い。
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