研究概要 |
申請者らは抗HIVならびに抗ウイルス活性が注目されているカルボビルと炭素環オキセタノシンの化学構造に基づいて合成した9-〔4,5-bis(hydroxymethyl)cyclopent-2-en-1-yl〕-9H-adenine(BCA)の(-)-体のみが抗HIV活性を示すことを見い出し、アルカノールと各種核酸塩基との光延反応を鍵ステップとしてBCAのノルボルナジエンからの効率的な合成法を確立した。本研究では,本法を展開し、塩基部位又は糖部位の異なるBCAの類縁体を合成し、生物活性評価を行なった。本研究の大要(1-4)は、1.まず申請者の方法に従いノルボルナジエンからコ-リ-ラクトンに導き、脱水,減灰反応を経てビスヒドロキシメチルシクロペンテニルアルコール体を合成した。2.各種プリン塩基又はピリミジノンとアルカノールとの光延反応がそれら塩基のアルキル化に広く適用できることを明らかにしたので、本法を利用し、ビスヒドロキシメチルシクロペンテニルアルコール体から各種のBCA類縁体(6-フルオロプリン体,6-ジメチルアミノプリン体,2,6-ジクロロプリン体,6-アミノ-2-クロロプリン体,2-クロロ-6-ヒドロキシプリン体,シチジン誘導体等)へ変換した。3.BCAの6-クロロプリン類縁体をジオール化又はエポキシ化を行ないアンモニア処理することによりBCAのジオール誘導体又はアミノヒドロキシ誘導体を合成した。又、ビスヒドロキシメチルシクロペンテニルアルコール体をエポキシ化した後アデニンとの光延反応によりBCAのエポキシ体を合成した。4.ここで合成した新規BCA類縁体の抗ウイルス活性,抗腫瘍活性及び毒性についての評価は、東大応微研(鶴尾隆)及び金沢大ガン研(佐々木琢磨)との共同研究にて行ない、シチジン誘導体に抗HIV活性が、2,6-ジクロロプリン体に抗腫瘍活性が認められたが、顕著なものではなかった。
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