研究概要 |
プロスタサイクリン類縁体の研究において、イソカルバサイクリンは強力な活性を持つのに対し、二重結合の位置異性体である6-イソカルバサイクリンはその活性が非常に弱いことが見出されている。そこで、この構造的に類似している2つの化合物の極端な活性の違いの原因を究明するために、これらの化合物の3次元構造と活性との相関について解析を行うこととし、その際に必要となる6-イソカルバサイクリンを光学活性体として合成することとした。6-イソカルバサイクリンの合成法は既に知られているが、ラセミ体での合成であり、また、二重結合の導入位置に曖昧さが残る方法であるため、これらの問題点を解決した合成法の開発を行った。光学活性体としての合成のために合成中間体である2環性のアルコール体の光学分割を検討し、トシルフェニルアラニルエステルとすることによって効率的には問題があるが、その目的を達成することが出来た。また、alpha,beta-不飽和ケトンへのomega鎖導入反応においては、Li_2CuCNMe_2のリガンド交換により得られるhigher-ordercuprateが最も効率の良い反応剤であることを見出した。alpha鎖をbeta-オキソスルホンのアルキル化反応で導入し、その還元により得られるbeta-ヒドロキシスルホンのナトリウムアマルガムを用いた還元的な二重結合への変換によって、二重結合の位置に曖昧さのない形での6-イソカルバサイクリン合成ルートを完成した。現在、イソカルバサイクリン、6-イソカルバサイクリンの計算化学的手法、分光学的手法による構造解析を行っており、イソカルバサイクリンについては、分子力場計算によって得られた安定構造がNMRにより支持される構造であることを見出している。
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